2026年版|熱中症対策義務化!罰則リスクを回避する具体策を解説

近年は猛暑日が常態化し、建設現場や工場、物流、警備、農業などの現場では、熱中症による労働災害が深刻な問題となっています。こうした背景を受け、2025年6月より、一定条件下の作業において企業の熱中症対策が義務化されました。今後は努力義務ではなく“実施すべき安全対策”として対応が求められ、適切な対策を怠った場合、企業責任が問われる可能性があります。
本記事では、熱中症対策義務化の概要や法的要件、対象となる現場、罰則リスク、今すぐ取り入れるべき具体策についてわかりやすく解説します。
目次
熱中症対策義務化とは
熱中症対策義務化とは、企業が従業員を熱中症から守るために、適切な対策を講じることを法律や指針によって義務付けた取り組みのことです。
職場における熱中症対策を強化することを目的に、2025年4月15日に「労働安全衛生規則の一部を改正する省令」が公布され、2025年6月1日から施行されました。これにより、WBGT値28℃以上(または気温31℃以上)の環境下で作業する場合、事業者は「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が義務付けられ、これに違反した場合は6カ月以下の拘禁または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
義務化の背景
義務化の背景には、地球温暖化や猛暑の影響により、職場(特に建設業、製造業、警備業など)における熱中症での休業・死亡者数が増加・高止まりしていることが関係しています。

厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」
厚生労働省によると、2024年の職場における熱中症による死傷者数は過去最多水準となっており、毎年死亡災害も発生しています。そこで国が個人による判断には限界があり、これまでのガイドラインをもとにした対策では防ぎきれないと判断し、罰則を伴う規則として熱中症対策を義務化しました。とくに、建設業や製造業、運送業など屋外・高温環境下での作業現場では重症化リスクが高く、企業側の安全配慮義務がより強く求められています。

厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」
また、熱中症による死亡災害が起きる理由の多くが、「初期症状の放置と対応の遅れ」であり、早期発見と重篤化させないための対策を講じることが必要とされています。熱中症は、初期症状に気づきにくく、短時間で重症化する危険があるため、屋外作業だけでなく、次のような状況・状態で作業する場合は注意してください。
- 高温多湿環境での長時間作業
- 水分・塩分補給不足
- 睡眠不足や体調不良
- 暑さに身体が慣れていない時期
- 一人作業や休憩不足
実際に発生した死亡災害では、「異変に気づくのが遅れた」「休憩が十分に確保されていなかった」「緊急時の対応ルールがなかった」といったケースも少なくありません。従業員の命と健康を守り、事業を継続していくためにも、毎年、現場環境に応じた適切な熱中症対策を実施しましょう。
熱中症対策義務化の概要
| 関連する法律 | 労働安全衛生法第22条(および改正労働安全衛生規則) |
| 対象 | 業種・規模を問わず、対象作業が発生するすべての事業者。 |
| 対象作業 | WBGT(暑さ指数)28℃以上、または気温31℃以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施が見込まれる作業。空調設備のない屋内作業も対象となるため注意が必要です。 |
| 対象作業例 | 建設や土木現場、工場・製造ライン、倉庫や物流の作業、警備業務、農業・畜産業、清掃・設備点検、屋外イベント設営、道路工事、解体作業など |
WBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)は、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さの指数で、気温だけでなく、湿度、日射・輻射熱・風などを総合的に評価するものです。単純な気温よりも、実際の“熱中症危険度”を把握しやすく、現在は多くの現場で活用されています。
実際の作業現場で実測できない場合は、環境省の熱中症予防情報サイトで地域別の暑さ指数を確認できますので、現場がある地域の暑さ指数を事前に把握しておきましょう。
企業が今すぐ取り入れるべき熱中症対策
改正された労働安全衛生規則では、一定条件に該当する作業について、事業者に次の3つの対応が義務付けられています。
① 体制の整備
熱中症の疑いがある作業者を発見した際、すぐに報告・連絡できる体制を整えること。緊急連絡網の整備、管理者への報告ルール作成、異常時の対応担当者の明確化のほか、職場の巡視や熱中症対策のウェアラブルウォッチ活用、バディ制の採用など。
② 手順作成
熱中症者を発見した際に、重篤化を防止するために迅速かつ的確な判断・処置ができるように対応手順を事前に決めておき、関係作業者へ周知させる。
③ 関係者への周知
事業場における緊急連絡網や緊急搬送先の連絡先と所在地を周知徹底する。

熱中症は、「現場任せ」にしないことが重要です。ここでは、企業として実践すべき具体的な熱中症対策を紹介します。
暑さが厳しくなる前に「暑熱順化」
暑さが増してくる時期に、屋外など高温多湿の環境下で作業する計画がある場合、従業員へ暑熱順化(※)をさせることで熱中症の発症リスクを下げることができます。近年は5月ごろから気温がぐんと上がる傾向にありますので、作業計画をもとに暑熱順化する期間を設けましょう。
※春から初夏にかけて体を徐々に暑さに慣らし、汗をかきやすくして効率的に体温を下げる機能(発汗・皮膚血管拡張)を高める対策。
暑さ指数(WBGT)の測定と管理の徹底
WBGT値28以上の環境では、作業時間の短縮や長めの休憩を取ることが重要です。現場にWBGT測定器を設置し、数値の定期確認と危険レベルの共有、作業中止基準の設定などを行いましょう。
WBGTの測定・管理を徹底するための具体的なポイントは以下の通りです。
1. 測定器の選定と設置のルール
正確なリスク評価のため、黒球(輻射熱を測る黒い球体)が付いた「JIS B 7922」適合の測定器を使用して計測しましょう。なお、計測する際は、衣類の組み合わせにより補正値を加えてください。

測定に適した位置は労働者の体温に影響を与えやすい胸元に近い高さ(立ち作業なら地上1.1m〜1.5m、座り作業なら0.6m前後)です。屋外ならば、直射日光の下に設置し、代表地点で測る場合は、屋上など、日差しが遮られずもっとも暑くなりやすい作業場所を選定してください。
2. 測定の頻度と管理体制
気温や湿度は1日のうちに大きく変動するため、「始業前・午前10時ごろ・昼前後・午後15時ごろ」など、定期的な測定を推奨します。また、雨上がりで湿度が急上昇した場合など、天候が急変した際は気温も変動するため随時測定が必要です。それに加え、現場ごとに「熱中症予防管理者」などの責任者を定め、定期的なWBGT値の確認と作業の中断や休憩の指示を出す権限を持たせましょう。
3. 数値に応じた行動基準を徹底する
測定して終わるのではなく、WBGT値に応じて現場が取るべきアクションをあらかじめ決めておきましょう。

4. 記録の保存と周知
測定結果は測定日、時刻、場所、数値、および実施した対策(休憩の延長など)を記録し保存しておくと、法定義務を履行している証拠となり、万が一の労災発生時にも重要な資料となります。その日のWBGT予測値や実測値を掲示板などで共有し、作業員全員が現在のリスクレベルを把握できるようにしましょう。
従業員の日々の健康管理
睡眠不足や体調不良、前日の飲酒や朝食の未摂取などは従業員の熱中症発症リスクを高める可能性があります。そのため、従業員が日々安全に作業を行えるよう、一人ひとりに健康管理の指導を行うとともに、責任者は意識的に健康状態を確認しましょう。
休憩と水分・塩分補給の確保
熱中症予防においては、水分・塩分補給をいつでもできる環境づくりが重要です。暑さ指数が基準値(WBGT28〜31℃以上など)を超える場合、作業を中断または短縮し、休憩回数を増やすなどの措置を講じなければなりません。作業場所の近くに直射日光を遮る涼しい日陰や、冷房を備えた休憩所を設置し、休憩時に利用できるようにしましょう。
最近では、現場にウォーターサーバーを導入し、従業員が手軽に冷水を摂取できる環境を整える企業も増えています。たとえば、アクアクララのようなウォーターサーバーは、飲みたい時にすぐに冷水が利用できるため、職場の熱中症対策としても非常に有効です。大量の発汗がある場合は、飲料と併せて塩タブレットや塩飴の摂取を促し、電解質バランスを崩さないよう配慮しましょう。
「忙しくて休めない」状況を防ぐ
屋外や高温の室内で作業を行う場合、どんなに忙しくても、確実に休息をとることを忘れてはいけません。定期的に作業する従業員へ水分補給タイムを設けるなど、責任者が能動的に指示を出す体制を整え、休憩時には、顔色や意識の有無、立ちくらみの有無などを相互に確認するよう、手順をマニュアル化しておきましょう。

身体の冷却と服装の改善
作業時は、通気性・透湿性の高い作業服や空調服、保冷剤を入れるベスト(アイスベスト)の着用のほか、首筋、脇の下、太ももの付け根などの太い血管を冷やせるネッククーラーも効果的です。
休憩時は身体を効率よく冷やすために、休憩場所には氷やお水、冷たいおしぼり、シャワー、冷風機など、体を効率よく冷やせる備品を常備し、十分な休憩時間を確保してください。
なお、近年は作業前に身体を冷やす「プレクーリング」も注目されています。プレクーリングとは、作業を開始する前にあらかじめ体温(深部体温)を下げておくことで、作業中の体温上昇を緩やかにし、熱中症のリスクを抑える手法です。作業開始の20〜30分前から保冷剤入りのベストを着用し、太い血管がある脇の下などを冷やしたり、細かい氷が混じったシャーベット状の飲料を飲んで深部体温を下げたりする方法があります。
緊急時の対応体制構築(連絡・救急搬送)

万が一に備え、現場がパニックにならず迅速に動けるように次の4つを明確化し「誰が判断するのか」「どこへ連絡するのか」を明確化しておきましょう。
緊急連絡フローの構築
誰が、誰に、どの手段で連絡するかを明確にして、文書化します。
- 現場内連絡:異変に気づいた作業員がすぐに現場責任者や周囲に知らせるための手段(無線、拡声器、笛など)を決める。
- 社内報告:本社や安全管理部門への連絡ルートを定め、報告先の電話番号を現場に掲示する。
- 外部通報:119番通報を行う判断基準と、現場の正確な住所(目印や搬入口の番号など)を記したメモを電話付近や詰所に備え付ける。
救急搬送手順
症状が悪化した際、即座に病院へ運べるように準備をしておきます。そのために、作業現場近辺で「熱中症患者の受け入れが可能な病院」のリストアップ、診療時間や夜間対応の有無を確認しておくことに加え、救急車を要請するか、社用車で自力搬送するか(意識がある場合など)の判断基準を決めておきましょう。
応急処置方法
熱中症は急に容体が悪化する場合があります。救急車が到着するまでの数分間が重要となるため、応急処置ができるようにマニュアルを作っておきましょう。「呼びかけに答えない(意識が朦朧としている)」「自力で水が飲めない」場合は、即座に119番するなど、重症度の際のルールを設けます。
処置の3原則(冷却・水分・休養)
- 風通しの良い日陰や冷房の効いた部屋など、涼しい場所へ移動させる。
- 服を緩め、首・脇の下・太ももの付け根を保冷剤や冷たい水で冷やす。
- 自力で飲める場合に限り、経口補水液等を与える。
安全衛生教育と体調管理
熱中症対策はマニュアルをつくるだけでは機能しないため、従業員教育を実施して、周知徹底することが重要です。とくに、新入社員や暑さに慣れていない従業員への配慮も忘れないようにしてください。
朝礼や安全教育の時間を使って、全員に緊急連絡先と応急処置の流れを説明するほか、実際に「作業員が倒れた」と仮定して、通報役、冷却役、誘導役に分かれたシミュレーション(避難訓練の熱中症版)を実施することで、万が一の時もスムーズに対応することが可能になります。
神奈川県内で活用できる熱中症対策の補助金(2026年度)
2025年6月より職場での熱中症対策が一部義務化されたことに伴い、設備投資を支援する制度が充実しています。空調設備や空調服、休憩所におく飲料などを導入するために、補助金を活用しましょう。
◆中小企業省エネルギー設備導入費等補助金◆
空調設備やLED、ボイラーなどの省エネ性能が高い設備への更新を支援するものです。
- 対象:県内中小企業、学校法人、医療法人、社会福祉法人など。
- 補助内容:補助率1/3、上限500万円(認証制度等の加点により最大600万円)。
- 期間:2026年6月1日~11月30日(予算終了まで)。
- 詳細:神奈川県公式サイト内「中小企業省エネルギー設備導入費用等補助金」
◆建設業熱中症対策補助金(横須賀市)◆
市内の建設事業者を対象に、現場での熱中症対策器具の導入を支援する制度です。
- 対象経費:ファン付きウェア、スポットクーラー、ポータブル冷蔵庫など
- 補助内容:補助率1/2、上限10万円
- 期間:2026年5月1日~10月30日
- 詳細:横須賀市公式サイト内「建設業熱中症対策補助金」
◆中小企業生産性向上支援補助金(相模原市)◆
さがみはら地球温暖化の防止に向けた脱炭素社会づくり条例に規定する「地球温暖化対策計画書」を市へ提出し、この計画に基づいて省エネルギー設備や再生可能エネルギー利用設備を市内事業者へ導入する中小規模事業者に対し、導入費用の一部を補助するものです。
補助金の申請には事前に「地球温暖化対策計画書」の提出が必要となります。
- 対象経費:設備購入費/工事費
- 補助内容:補助率1/3、上限金額100万円
- 期間:2026年5月15日~10月30日。
なお、このほかにも全国一律で申請可能な制度があります。
◆業務改善助成金◆
賃上げと同時に生産性向上(エアコン、スポットクーラー、遮熱施工、空調服など)を行う中小企業が対象です。
- 補助内容:最大補助率9/10、上限額最大600万円
- 詳細:厚生労働省公式サイト内「業務改善助成金」
◆エイジフレンドリー補助金◆
60歳以上の労働者がいる中小企業を対象に、身体的負担を減らす設備(WBGT測定器や冷房付き休憩所の整備など)を支援します。
- 補助内容:補助率1/2、上限100万円
- 詳細:令和8年度のエイジフレンドリー補助金の詳細は準備中
◆働き方改革推進支援助成金◆
2020年より中小企業に、時間外労働の上限規制が適用されました。働き方改革推進支援助成金は、生産性を向上させ、労働時間の削減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業を支援する取り組みです。労働能率を増進するために冷房設備・機器などを導入したい企業が対象となります。
- 補助内容:補助率最大4/5(一部3/4)、上限200万円
- 詳細:厚生労働省公式サイト内「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」
熱中症対策を怠った場合のリスク|罰則について解説
2025年6月1日に施行された改正労働安全衛生規則により、特定の条件下で働く労働者のいる企業には熱中症対策が義務付けられました。しかし、該当するにも関わらず、対応を怠っていた場合、労働安全衛生法違反として是正指導の対象となるほか、重大事故が発生した場合はさらに、企業責任や安全配慮義務違反を問われる可能性がありますので注意してください。
刑事罰に関して
労働安全衛生法第119条1号において、同法22条2号「事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない―放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害」に違反した者に対し、「6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」が課されることが記されています。
熱中症対策を怠った事業主や法人、現場責任者などは、労働安全衛生法に基づき以下の罰則の対象となります。
- 6ヶ月以下の拘禁刑(懲役)または50万円以下の罰金
- 両罰規定:違反行為をした本人(現場責任者など)だけでなく、法人に対しても同様に50万円以下の罰金が科される。
行政処分・指導
刑罰以外にも、労働基準監督署などから是正勧告・指導を受け、改善を求める勧告が行われたり、重大な違反や危険が認められたりした場合、都道府県労働局長らによって作業の停止や設備の変更が命じられることがあります。
民事上の責任(損害賠償)
もし、熱中症対策を怠ったことで従業員が熱中症になり、結果的に後遺症や死亡に至った場合、企業は安全配慮義務違反を問われることになります。
被害者や遺族から多額の損害賠償(慰謝料など)を請求されるリスクがあるほか、過去には数千万円単位の賠償が命じられたケースも存在するため、従業員の安全を守るためにも、企業としてのリスクマネジメントの観点でも、熱中症対策の強化を必ず行いましょう。
まとめ|暑さが本格化する前に熱中症対策を!
熱中症対策義務化によって、企業にはより具体的な安全管理が求められるようになりました。対策を怠れば、罰則や企業責任につながる可能性もあるため、「事故が起きてから対応する」のではなく、暑さが本格化する前からしっかりと準備を進めることが重要です。
WBGT管理、水分・塩分補給、休憩環境整備、教育体制構築など、できることから早めに取り組み、従業員が安心して働ける環境を整えていきましょう。
アクアクララ湘南熱中症アンバサダー
近藤 純也
熱中症アンバサダーからのひとこと
熱中症対策は、暑くなってからではなく、暑くなる前の準備がとても重要です。職場に冷たい水を飲める場所を用意し、休憩時だけでなく作業前後にも水分補給を習慣化していきましょう。従業員の方が安心して働ける環境づくりを、できることから一つずつ始めてみてください。
冷たいお水をすぐ飲める環境づくりに。
アクアクララ湘南のウォーターサーバー
熱中症対策では、のどが渇く前にこまめに水分をとれる環境づくりが大切です。アクアクララ湘南なら、オフィスや現場の休憩所で冷水をすぐに利用でき、従業員の水分補給をサポートします。
熱中症アンバサダー
近藤 純也
熱中症アンバサダーからのひとこと
職場の熱中症対策では、「気づいた人がすぐ声をかけられる環境づくり」が大切です。水分補給や休憩は個人任せにせず、現場全体で声をかけ合うルールにしておくと、初期症状の見逃しを防ぎやすくなります。冷たい水をすぐ飲める環境を整えておくことも、毎日の対策として取り入れやすい方法です。