MEETING ROOM vol.7|コーポレートグループ 坂寄紘平|"有言実行"を掲げ、地道な改善から全社DXを動かした8年半
株式会社古川で働く"人"の哲学とリアルに迫るインタビュー連載『F MEETING ROOM』。第7回のゲストは、コーポレートグループ マネージャー 兼 DXプロジェクトリーダーの坂寄紘平さんです。
総務の現場改善から始まり、基幹システムの刷新、Google Workspace導入による全社DX、そして他社のDXを支援する新会社「ODX」の立ち上げへ。8年半かけて会社を変える中心人物になった坂寄さんに、座右の銘「有言実行」の裏側にある覚悟を、安藤良平が聞きました。
はじめに
今回対談させていただいたのは、コーポレートグループでマネージャーとDXプロジェクトリーダーを兼任されている坂寄紘平さんです。2023年度、2024年度と2年連続で殊勲賞を受賞し、2025年度には新設された「古川DX大賞」も受賞。古川のDX・AI推進を語るうえで欠かせない方だと伺っていました。
事前にプロフィールを拝見して驚いたのは、その受賞の軌跡です。インボイス制度対応での請求業務の見直しから始まり、請求書・利用明細書の電子化、そしてGoogle Workspace導入によるクラウド化・ペーパーレス化。現場の地道な改善の積み重ねが、3年かけて全社を動かす力になっている。
僕自身、フットサル選手として新しい戦術やスタイルをチームに取り入れる時、周囲の戸惑いや反発をどう乗り越えるかをいつも考えています。だからこそ、社内の半数以上にAI活用を浸透させ、今は他社のDXを支援する新会社まで立ち上げた坂寄さんに、その原動力を聞いてみたいと思っていました。
登場人物プロフィール

GUEST
坂寄 紘平(さかより こうへい)
株式会社古川 コーポレートグループ マネージャー
2018年入社、勤続8年半。電算業務を皮切りに保安・配送・アクアクララ・LPガスなど部署横断で業務改善に携わり、2024年2月からDXプロジェクトリーダーを兼任。2026年度の新組織体制移行に伴いコーポレートグループ マネージャーに就任。2023・2024年度は殊勲賞、2025年度は新設の「古川DX大賞」を受賞。座右の銘は「有言実行」。趣味は鎌倉七福神巡りと旅行、好物は唐揚げ。

INTERVIEWER
安藤 良平(あんどう りょうへい)
ブランドアンバサダー / プロフットサル選手
現役プロフットサル選手。Fリーグの名門・名古屋オーシャンズで数々のタイトル獲得に貢献し、日本代表としても活躍。今季、古巣・湘南ベルマーレに復帰。トップアスリートとして勝負の世界で得た知見を、ビジネスにおける"勝ちの探求"へと繋げ、企業のブランド価値向上に貢献する。
第1章: 「その人にしか分からない」をなくしたくて――電算業務から始まったキャリア
電算業務から、部署を横断する"何でも屋"へ
安藤
坂寄
それを結構長くやっていて、そのおかげで部署をまたいだ業務にどんどん携わることになったんです。保安もそうですし、配送もそうですし、アクアクララもそうですし、もちろんLPガスもそう。いろんな部署の業務をまたいでやることになって、「なんかここはこうした方がいいんじゃないか」というのを、自分なりに色々と考えられるようになった感じですね。
安藤
坂寄
実際にやっているのは、社内のDX推進と経理、総務、人事、請求関連。企画広報が一緒になったことによって、今までそれぞれ特化してやっていた部分をみんなで共有できるようになって、「もっとこういう風にやった方がいいんじゃないか」「こういう風にもっと会社のアピールをした方がいいんじゃないか」という話がすごく広がった気がしますね。
どうしたら古川を知ってもらえるか、知ってもらった上でどう問い合わせにつなげるかを、一緒になって考えられるようになったので、率直に面白くなりましたし、やることもちょっと増えたかなという感じです。
DX・総務・マーケティングという3つの柱
安藤
坂寄
それに加えて、古川が「ODX株式会社(小田原デジタルトランスフォーメーション)」という新会社を立ち上げまして。うちのDXというより、他社のDXを支援する会社なんです。私もそこに出向という形で参加していて、2月頃から進めている1社目の支援に続いて、7月で2社、9月からは3社目に入ります。相手先の依頼事や今後の課題をどう進めていくかをスケジューリングして、先方といろいろやり取りをして日程調整や資料作成・ご提案、というのが今主にやっている仕事ですね。
かといって古川の自分のグループの業務もあるので、今後1年このグループが会社の中でどういう立ち位置になっていくかを考えるのも仕事のひとつです。
鎌倉七福神巡りと唐揚げ、平日ストイックな食生活
安藤
坂寄
安藤
坂寄
安藤
坂寄
安藤
坂寄
それが土日になるとチートデイで、レストランに行って全然食べ放題じゃないところでも「好きなだけ食べていい」と言って好きなものを食べて、お酒も飲む。それが1番のリフレッシュになっている気がしますね。最初は結構つらかったんですけど、慣れると平日はお米を食べなくても全然平気になりました。その代わり月曜日は顔がむくんでますけどね(笑)。
第2章: 基幹システム刷新という"最大の転換点"、そして「守りから攻めのDX」へ
「その人にしか分からない」を変えた基幹システム刷新
安藤
坂寄
その前は、その基幹システムを扱っていた特定の人だけが掌握していたというか、その人しか分からない、いじれないという感じでした。このデータを出してほしいと言っても、その人にしか対応できない。それが結構自分の中ではある程度理解できていたんですけど、そこに触れる、触れないというのがあって、なかなかできなかったことにもどかしさを感じてました。ちょうど入れ替わるタイミングで、これはちょうどいいなと思って、1から自分が携われば全部把握できるようになるなと思って、そこにかなり時間をかけました。入れ替える時期は9時、10時まで残業する毎日で、システム入れ替えをした日は徹夜だったりで本当に大変でした。でもそのおかげで、今いろんな部署に提案ができるようになったし、逆に「これはできません」ということもはっきり言えるようになりました。
もうひとつ大きかったのが、2年前に会社のプラットフォームをGoogle Workspaceに入れ替えたことです。ちょうどそのタイミングで、副業人材の柳澤さんという方が、社長から「こういう風にDXをやっていくんだ」という方針のもとDXプロジェクトに加わってくれて。素人集団だけで勝手にやっていても方向がバラバラになってしまうところを、柳澤さんが旗を振って「こういう方向で、このスケジュールで行きましょう」と示してくれたのが、本当に大きかったです。あの方がいてくれなかったら、今の状態はなかったと思います。
心理的ハードルをどう下げるか
安藤
坂寄
固定概念が自分の中でできてしまっている人には、「こういうこともできるよ」と言ってあげても「そうなんだ」で終わってしまうことが多いので、ちょっとした成功体験、アプリを入れたりGeminiを使ったりすることでこういうことができるようになったよ、逆にこれを1回止めて手入力・手書きに戻したらどうなる?と全部自分たちで想像してもらう、というアプローチをしていました。
実務の部分は、今グループにいる3人のリーダーに任せて、担当者のペースの変化を見守ってもらう方針です。DXやAI活用は何をやっていいか分からない、というのが多分1番の壁で、強制的にやらせても結局その場限りで定着しないので、そこはもう様子を見ようというスタンスでやっています。
攻めのDXへ:ガス業界の同業者との会合で転機
安藤
坂寄
そこから始まって、1番大きなきっかけになったのは今年2月のODX株式会社設立で、そのそもそものきっかけが去年10月に同業のガス会社が集まって情報交換する会合に参加したんです。行った理由は、うちがDXをやり始めているから、それをガス業界にも簡単に説明できたらいいよねということで、僕がDXプロジェクトリーダーだったのでお声がかかりました。会合でグループ分けのディスカッションになった時に、うちの取り組みの話をしたんです。その場にいたのが営業系の若い方たちで、僕は営業ではなく総務系なんですけどと前置きして話したら、すごく食いついてくれたんですよ。ガス業界ってDX的にはかなり遅れているんだなということを、そこで初めて強く認識しました。
その場に居合わせた同業の会社さんから「もっと詳しい話をお聞きしたい」という話になって、それが今も支援している会社さんへとつながっています。ガス業界だけでなく、9月1日からは運送業など全く違う業種からも契約をいただいていて。使っている基幹システムやソフトは業種ごとに違っていても、ちょっと課題を聞くとGoogleワークスペースを入れることでだいたいの業務フローの課題は解決できることが多くて、そこからはもう業種は関係ないなと感じています。
放置されたホームページと、ウェブマーケティングの本当の価値
安藤
坂寄
安藤
第3章: 「言葉にしたら、もう自分がやるしかない」――有言実行のリーダーシップ
あえて自分にハードルを課す
安藤
坂寄
企画をする時も、みんなに意見はもちろん聞くんですけど、まずは自分がやるという前提で、100%やる、というスタンスで相談します。「〇〇が理由で無理です」と言わせないところまで、外堀を絶対に埋めてから進めるんです。一例で社長からガスの供給契約書(14条)がずっと紙のままだったのを電子化できるだろ?という要望があった時も、そういう風にいろんな人を巻き込んで、もうやりますよという雰囲気にしてから、実際にやっていく。1人だと絶対に負けちゃうので、他部署の決済者に対しても「ここまでできているんだから大丈夫じゃないですか」と言えるところまで、行政のことも含めて全部調べて持っていくようにしています。
もちろん、思いつきでやってしまって現場が困ることも多々あるので、下準備が弱い時もあるんですけど、それでも「言ったことはやる」という責任だけは譲りたくないんです。後から「あいつは口だけだったよね」と言われるのが、1番嫌なので。
バンド活動で培った「プロとしての責任」
安藤
坂寄
安藤
坂寄
「7割を上げていく」という覚悟
安藤
坂寄
もちろんいきなり突き放すわけではなく、順を追って説明はします。ただ、社会人として労働の対価で給料をもらっている以上、古川の一員としてやっていく気持ちやマインドはきちんと伝えるようにしています。なので、まずは7割の人たちに理解してもらえればいいかな、という気持ちでやっていて、そこを底上げしていく。残りの3割については、それでも難しいなら仕方ない部分もありますが、ついてきてくれるならちゃんと理解を深めてもらいたいなと思いながらやっています。
安藤
坂寄
メンバーを人一倍観察する
坂寄
当時の課長代理たちから聞いた情報も活用しながら、腹落ちしないと絶対に先に進めないタイプの社員や、ちゃんとやるし、向上心を持っているんだけどミスが多い社員など、その人に応じたフィードバックを、面談やその都度のやり取りの中でしていました。多分みんな、そこまで見られていないだろうと思っていたかもしれないですけど、人一倍見るようにしていましたね。
何かいいことがあった時や、お客様に褒められたりした時は直接伝えに行くようにしていましたが、逆に改善が必要な時は、役職を飛び越えないよう、リーダーを通じて方向性を伝えるようにしています。
リーダー3人に完全に任せる
安藤
坂寄
挑戦できるピッチはもうある状態なので、あとは自由にやってもらう。むしろみんなが色々とアイデアを言ってくるので、それに対してどんどん形にしていくという感じでしょうか。逆に進んでいなかったら、リーダーに「なんで進んでないの」という話になりますけど。担当者レベルへの細かい口出しはあえてしないようにしていて、そこは各リーダーから言ってもらうという形にしています。
第4章: 「1番の強みは社長」――挑戦を許す会社で、次に有言実行したいこと
一番の強みは社長
安藤
坂寄
失敗を恐れず、準備した上での挑戦
安藤
坂寄
ODXの認知拡大という次の挑戦
安藤
坂寄
お客様・採用候補者・仲間へのメッセージ
安藤
坂寄
採用に関しては、非常にチャレンジができる会社だと思っていて。100年以上続いている会社の割にはやり方がガチガチに決まっていないので、「こういうことをやりたい」という思いにちゃんとした裏付けがあれば、いくらでも挑戦できます。古川は、実績を残せばちゃんと認められて、任される裁量も広がっていく会社です。
社員の皆さんについては、なんとなく給料はもらえるからと思って働いている人もいると思うんですが、うちは頑張った分、認めてもらいやすい会社だと僕は思っていて。そう?と思っている人は、アピールの仕方をもっと自分たちで考えて、周りを巻き込んでプロジェクトを組んだりすれば、会社としてはすごく重宝してくれると思います。ここで働けていることに、誇りを持ってほしいというのが1番の思いですね。
あとがき
坂寄さんの話を聞いていて、一番印象に残ったのは「言葉にしたら、もう自分がやるしかない」という一言でした。有言実行という座右の銘を、あえて自分にプレッシャーをかける手段として使っている。マニュアルがないなら自分で作る、外堀を埋めてから物事を進める。バンド活動の中で培った「チケットを買ってくれるファンにがっかりされてはいけない」という感覚は、僕たちアスリートの世界での「有言実行」とも、まったく矛盾しないものでした。
もう一つ心に残ったのは、「7割の人たちを上げていく」という一見厳しく聞こえる言葉の奥にあるものです。コミュニケーションが得意ではないと語りながらも、メンバー一人ひとりの癖や仕事の処理の仕方を「人一倍見ていた」という坂寄さん。それは冷たさではなく、労働の対価を得るプロとしての責任の取り方なのだと感じました。そして、古川の一番の強みを聞かれて「社長」と即答したこと。それは、「失敗を恐れず挑戦するが、しっかり準備した上での挑戦であれ」という考え方に、坂寄さん自身が本気で影響を受けているからこその言葉だと思います。この姿勢は、古川のスピリット「礼儀正しく誠実であろう」「お客様目線に立って考えよう」、そしてスローガン「わが街のパワーに」をそのまま体現しているように感じました。
「言葉にしたら、もう自分がやるしかない」。この言葉を胸に、次はODX株式会社の認知拡大という新しい挑戦に向かう坂寄さん。有言実行の先に、どんな景色が待っているのか。これからも楽しみにしています。
安藤 良平